「ジーンズ、見てください」
そう声を掛けてくださったのは、70代の女性のお客様でした。
今穿いているジーンズは、もう何年も愛用しているそう。
「いい加減、新しいジーンズが欲しくて」
とのことで、サイズ違いやブランド違い、フレアの広がりが異なるジーンズをいくつかご紹介しました。
その中から候補を絞って、まずは2本を試着していただくことに。
私は途中からジーンズを増やしていくタイプ(笑)
私の接客では、最初から試着室にたくさんの商品を持っていくことは、あまりありません。
まず何本か穿いてもらって、その様子を見ながら、
「こんなんもありますよ」
と、途中で違うタイプを持っていくことが多いです。
最初から「これ全部穿いてください」よりも、
「せっかくだから、これも穿いてみようかな」
くらいのほうが、試着のハードルも下がる気がするから。
そこから意外な一本が見つかることもあります。
この日も、いつもならそうするつもりでした。
でも、途中でやめました。
「今回は人生最後のジーンズを買いに来ました」
試着の途中、お客様がふと、
「今回は人生最後のジーンズを買いに来ました」
と言われたんです。
その言葉を聞いて、いつもの販売員モードを閉じました(笑)。
お客様はしゃきっとされていて、とてもお元気そうな方。
70代のお客様は普段から珍しくないので、年齢を聞いて「無理をさせないほうがいい」と思ったわけではありません。
ただ、その日は額に汗をかかれていました。
お話を聞くと、お店まで自転車で橋を渡って来られたそうです。
ここまで来るのも大変だったかもしれないな。
そう思ったら、
今日は、これ以上たくさん穿いてもらわなくてもいいかな。
いつもの「こんなんもありますよ」は、やめました。
本当なら、「ワイドも一度穿いてみませんか?」とおすすめしたかった私(笑)。
「似合わないと思っていたけど、意外といい」
そんな一本が見つかることもあるからです。
でも、この日はそこまでしませんでした。
選んだのは、しっかりフレアの新作ジーンズ
選ばれたのは、新商品のフレアジーンズ。
フレアのラインがしっかり出るタイプです。
この日、穿いておられたのもフレアパンツでした。
きっとこの方にとって、フレアは昔から馴染みのあるシルエットなんだろうなと思いました。
そして一本が決まったとき、
「やっと新しいジーンズが手に入った」
と、安心したように言われたのが印象に残っています。
何年も同じジーンズを穿いてきて、今日ここまで新しい一本を探しに来られた。
ジーンズは、この方にとって特別なおしゃれ着というより、ずっと当たり前にそばにあった服なのかもしれません。
そんな一本を一緒に選ばせてもらえたことが、なんだかじーんとしました。
人生最後なんて言わずに(笑)
お客様は「人生最後のジーンズ」と言われたけれど、私としては、
いやいや、まだまだ(笑)。
「元気でいてもらって、これも5年は穿いてくださいね」
なんてお話をしました。
そして5年後には、
「そろそろ新しいジーンズ見せて」
って、また来てほしい。
販売員としては、そっちが本音です(笑)。
人生最後なんて言わず、次の一本も一緒に選ばせてください。

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